わたしの産んだ、3人めのこどもは、のゆり、という。

21トリソミー、ダウン症を持つ三人目のこども、のゆりとの日々。きょうだいブログ『あおとわたし』(https://aoinotediary.hatenablog.jp/)も始めました。

のゆ、祝福をうける

日曜は教会で、七五三の祝福式があった。今所属している大きな教会では、コロナウィルス対策で聖堂に入れる人数が制限されてしまったので、かつてかりんが洗礼を受けた教会に出かけることにした。のゆになんの服を着せるかと1ヶ月前から夫の母からLINEが来て、どうしようかなあと考えていたものの買い物にも行かないまま日が過ぎて、ふと思い出した、のゆが生まれた時に買ったワンピースを出してみた。それは病院の近くの小さな商店街のかどっこにある、古いブティックという趣のこどもふくのお店に飾られていたもので、スペインのこどもふくがたくさんかかっていて結構値がはるのだけど、グリーンの厚手のウールにモスグリーンのざっくりとしたチェック模様、同じ色で袖口と襟にファー、胸元に細いリボンがあしらわれている、「小公女のような」、「ロシアのお姫様みたいな」ワンピースに、わたしは一目惚れしてしまったのだった。ダウン症だといわれたのゆが、どのくらいのスピードで大きくなるのか、この服をいつ着るのか、来年かな再来年かなと思いながら買ってしばらくベビーベッドのそばに飾っていたのが、3年経って、ピッタリになった。そこに、わたしの3歳の時に使ったネイビーのベルベットのボンネットとハンドバッグを出してあげるとのゆは大喜びで頭に乗せて、ハンドバッグを腕にかけて歩いて行って、鏡の前で上機嫌に過ごしている。お人形が歩いているみたいで、かわいく、おもしろい。かりんにはやはりわたしが昔着ていて、そのあと姪に使ってもらった、グレーのウールに小花の刺繍がついたワンピース(古いデザインなので袖がふっくらしてるけどそれがかえって細身すぎる花梨の上半身をふんわりと見せてくれてかわいらしい)、あおいには、母が教会のバザーで買ってきて新品のままだったネクタイ付きのワイシャツが出てきた。のゆの白タイツだけメルカリで買う。子どもの服装のあれこれが一番頭を悩ませるので決まって、ほっとする。

 

当日はとても良い天気で、教会附属の幼稚園のグラウンドが目の前にあり、のゆは一目散に走り出していく。なんとか呼び戻し、庭のマリア像の前でこどもたちを並べて写真を撮る。その教会のステンドグラス、天井画はものすごくカラフルで素敵で、久々に入る聖堂はそういえば私たちが、結婚式をした場所なのだった。

 

式の途中、祝福をうけるこどもは前に出る。ひとりで行ける子たちはひとりで、付き添いが必要なら親と一緒にと言われていた。わたしは迷わずのゆを抱き上げて邪魔にならないように一番後ろに控えていたが、あおはさっさと先頭の方に歩いていく。わたしは子どもたちがきっちり横一列になってしまったのであぶれて後ろに、聖堂の真ん中の通路に立つことになってしまい、居心地悪くしていると、のゆりが盛んに体をよじり、モジモジして落ち着かない。床に下ろして、「にいにのところに行く?」と聞くと、くるっと向きを変えてトコトコと歩き、兄の隣にいって手をギュッと握り、男の子との間にもぞもぞ割り込んで立った。その迷いのない後ろ姿にわたしは感心しながらついていく。わたしは迷わず抱っこして行ったけど、本人はみんなと同じようにやりたいし、強制されて嫌でなければちゃんとやるのだと知る。幼稚園のプレの帰り道、お友達と手を繋いでお迎えスポットまで歩いてくる姿を見たときの、静かな感動に似ていた。そうなると知っていたような、でもわざと期待しすぎないようにしていたような、そんなイメージ。

 

すぐにお祈りがおわり、子どもたちはぞろぞろと司祭のまえに行って、祝福をうけ、首にメダイをかけてもらい、千歳飴の袋を受け取り始めた。着物を着た女の子やスーツ姿の男の子なんかが一列で歩いていき、あおの後ろをのゆも歩いて行く。一人だけ小さいのゆが目立っているのかいないのか、よくわからないけど、いろんな歳の子どもたちに混じって、こうやって七五三している、そう思うと、予想外のことに涙がでた。

 

神父様はお話のなかで、この教会のステンドグラスの一枚に描かれた、イエスがこどもたちに祝福を与えるエピソードの話をした。『こどもたちを私のところへ来させなさい。妨げてはならない。神の国はこのようなもの達のものである』というくだり。その通りで、わたしたちは何にも妨げられることはなかった。この絵がステンドグラスにされているのは珍しい。それだけ、この教会はこどもたちを大切にしているのだと神父様は言った。式が終わると、聖堂には入れずにいた夫の兄夫婦と甥が入り口で待っていてくれた。あおはメダイにとても喜んで、胸を張り、「わーい。家に帰ったらピカピカに磨こーっと!」とつぶやいて、のゆは受け取った千歳飴の袋を嬉しそうにのぞいていた。

 

なんでこの教会じゃない場所を考えたのだろうと思うほど、暖かく、良い、1日だった。