わたしの産んだ、3人めのこどもは、のゆり、という。

21トリソミー、ダウン症を持つ三人目のこども、のゆりとの日々。きょうだいブログ『あおとわたし』(https://aoinotediary.hatenablog.jp/)も始めました。

おっとのこと

わたしには、結婚して15年になるおっとがいる。知り合った頃はまだ2人とも高校生で、お互いの中の似ている部分がつよく共鳴しあい、真反対の部分はおもしろくみえたもので、特に妙な組み合わせだとはおもっていなかったけど、大人になってみるとわたしたちはほとんどのことが真反対で、ほんの少しの、何かの時の感覚とか反応とか、善悪の基準とか気持ち良いと思う対応のようなものだけが共通しており、それは家族というチームになって仕舞えば、まわりの人に対応する時のやり方でもあるので、そこが共通しているが故にチームとしては不思議と機能するのかもしれない、そんなことは最近になって考えたことだ。とにかく人から見ればなぜ一緒にいるのかわからないらしい,真反対の組み合わせなのだった。生活の好みもやり方もしたいこともこだわりも何もかも違うので、生活の仕方については定期的に衝突する。これは深刻でそろそろなんとかせねばと思うけどその一方で、たいていはわたしの強すぎる特性が、ほとんどのことには対応するという彼の特性とピッタリはまって、日々が運営されているので、ついつい、まあいいかとやり過ごすうちに15年経った。このままいくのか、それともかれが我慢の限界を迎えるのかと薄々おもっていたら(それはわたしがいつも予定も物も詰め込みすぎ、とっちらかりすぎ、ごちゃごちゃであることに彼の好みの生活スタイルが徹底的に破壊されるという現状なのでわたしとしてもこんな表現になる)、おっとが仕事を辞めると言い出した。転職するということなのだけど、ようするに、もう何年にもなる、多忙で、夕飯にはまず帰らず、子どもが寝る時間に帰ることもあるけどしばらく見ないこともあるような生活、土日もふと気を抜くと眠ってしまうような疲れ切った体、3人のこどもを『ワンオペ育児』している妻とごちゃごちゃの家、という状態をすっぱり断ち切るという宣言なのだった。「このままだとうちが崩壊する」と言われた時は、わたしは「そんなでもないけど?夕飯はこどもの食べるもの作ればいいのでこれはこれで慣れてきたし」とおもいはしたけど、まあこんな生活では体を壊しそうだとは思っていたし、真顔で「このままでは、こどもがみんな大きくなってしまう」と言われたら、何も言うことはなく、そうだね、とうなづいたのだった。

 

とはいえこどもが3人いる状態で仕事を辞めますといえば友人などは口を揃えて「転職先は決めてからの方が良い」というのでそういうものらしいよと伝えたけど、労働環境をこれからよくするから、何年かかけて改善しよう、と引き留めてくれた上司に、「その何年かがもう待てないので」と言ったという話をかれから聞いてからは、まあもういいかなとわたしも腹を決めた。転職エージェントに登録したけど本格的に活動する暇もないという生活で、とにかく、かれは、「もう待てない」のだから。結局は、ずっと一緒に仕事をしていた人に声をかけてもらい、長期の失業は免れ、コツコツやってきたこの社会人生活がそうして信頼を勝ち得たことには心の底から良かったとおもうし、すごいことだと尊敬もし、こうして、拍子抜けするほどあっさりと、転職問題は幕を下ろした(たぶん!)。

 

会社を辞める時に期間を延長する条件として、彼は長めの夏休みをもぎとってあおと旅行に行き、冬は有給休暇消化で1ヶ月休んだ。新しい仕事も少し先延ばしにしたので2ヶ月ほど家にいて、正直どうなることかとおもっていたら、わたしは大変快適に暮らしていて、なんだか人生の真ん中で与えられたギフトのような2ヶ月だなあとおもっている。

 

大人が2人家にいるということは本当にすごいことだった。たとえば、何ヶ月も前から予約していた大がかりな健康診断の建物の入り口で(ほんとうに、自動ドアの前で!)あおの学校から電話がかかり、「お子さんが階段で転んで顎が割れてます」と言われても、泣く泣く健康診断をキャンセルして迎えに行かなくても済んだ(おっとが迎えに行き、学校に指示された校医に連れて行き、あおの顎は7針縫った)。たとえば、何ヶ月も前にのゆの主治医と相談して、他科の先生の予定を見て組んだ検査の日程とあおの学校の保護者会が重なっても、いちから相談し直して日程を組んだり、電話をたらい回しにされたりしなくてもすむ(わたしは学級委員なので、今回は保護者会にいく。おっとが、のゆの病院にいく)。たとえばなかなか予約が取れないスペシャルニーズ歯科での歯科検診と、かりんの学校の面談と、あおの学童の発表会が重なっても(こんなことも本当にある)、全てを手分けしてこなすことができる。何ヶ月も会っていなかった友人を江ノ島まで訪ねることができるし、妹と、土日にいつも予約が取れなかった最愛のメキシカンレストランに行くこともできたし、一時帰国する親友と10年以上ぶりに旅行に行くことができる!壊れたまま使っていた食器棚を買い替え、3人のお弁当を作るには手狭だった冷蔵庫を買い換え、年末は平日を使って旅行をして帰ってからでも元気に大掃除をした。いつも何かをなくして、時間に追われていて、当たり前のことがうまくできないとおもっているわたしが、目立ったトラブルも減ってきた。

 

きょうは、ずっと気になっていたネットバンクの手続きをして(生活をスムーズにするための家のお金の整理にも手をつけた)、おっとが退職のおせんべつにもらったスタバカードで、2人で抹茶フラペチーノの求肥トッピングを飲んだ。用事を済ませてはランチをしたりお茶したりしている。おかげでわたしは少し太った。気持ちもゆるっとしていて久々にまあまあ本も読める。生活しやすいシステムのために粛々と工夫をこなしつつ、この前訪ねたともだちに、おしえてもらった本を次々に読んでいこうとおもっている。