昨日、うちの近くのギャラリーにいくから、と、とつぜん聖子がきた。正確には、お茶しない?というメッセージで、あおいがお昼に帰ってくるし…カフェに座らせておくのは至難の技だし…とあれこれ考えた挙句、荒れ放題のうちを10分で片付けて家に来てもらった。聖子はユーカリの葉に可愛い赤い実が入った花束を持ってきた。わたしは新しいお気に入りである、アラビアのすみれのお皿にチョコオレンジのパウンドケーキをのせて出した。人見知りするとなにも言わなくなるあおは、にやにやしながらパウンドケーキを三切れも食べた。最高にたのしかった。
聖子はわたしがおもしろいとおもっている療育やダウン症の話を、おもしろいと聞いてくれた。聖子の新しいアトリエの話も、今後の手がかりになる言葉くらいは手に入れたいと思いながら、療育の講座や発達の勉強に明け暮れているわたしのはなしも、不思議と違和感なく、いつまでも話していられそうだった。のゆは途中で目を覚まして、冷めた目つきでとつぜんのお客を眺めながら、遅い昼食をとる。かりんが帰ってくるとさかんに手を挙げてヒラヒラして、かりんの一挙手一投足を目で追ってアピールする。聖子に抱かれるとのけぞって泣きながら、そのうち諦めてじーっとして、そのかわり、台所にいるわたしを目で追いかけ始める。そんなのゆを聖子はちいさい大人みたいな赤ちゃんだと言って丁寧に挨拶して帰っていった。
のゆの体の発達はまさに、定型発達のはんぶんくらいだけど、認知の面はそういうわけでもない。ものすごく小さなアンバランスな生きもの。のゆはどんなこどもに、なるのだろう。聖子が楽しみだといったのゆの行く末がわたしも楽しみだ。