わたしの産んだ、3人めのこどもは、のゆり、という。

21トリソミー、ダウン症を持つ三人目のこども、のゆりとの日々。きょうだいブログ『あおとわたし』(https://aoinotediary.hatenablog.jp/)も始めました。

のゆと、フォトグラム

夏休みの、終わり頃。写真家の北野さんが、フォトグラムを作るのにモデルになる赤ちゃんを探していると聞いて、のゆを連れて造形大に行った。がっこうが夏休みなので、かりんもつれていった。ハイハイで動き回る前くらいの月齢の赤ちゃん、と聞いたけど、月齢はともかくのゆはまだハイハイしないからぴったりだと思って、名乗り出た。

うちはもうすぐ一歳だけどダウン症があり、発達がゆっくりなので、まだ動かないので大丈夫です。と言うと、北野さんの返事に、「ダウン症の赤ちゃんは、発達がゆっくりなのですか。」と書いてあって、それはなんか、気持ちが楽になるような感じがした。知られていない、ということの、大変さもあるだろうけど気楽さもある。

 

赤ちゃんが集まってわいわいやって楽しいですよ、という言葉通り、スタジオの一角に作られた小部屋スペースに赤ちゃん連れの家族が5組集まった。かりんの他にも4歳の女の子が1人付いてきていた。

 

大きな印画紙の上に赤ちゃんをおいて撮影するわけだけど、当然、光は入れられない。モノクロの時は赤ライトのみ、カラーの時は完全な暗闇だ。あちこちに貼られた蛍光テープだけが目印で、プラネタリウムみたいな光だよ、と言われたけど確かにそうだった。天井にも貼ってあったら完璧、とかりんがいう。

 

暗闇でいきなり抱っこから離されるので赤ちゃんたちはみんな泣く。それは聞いていたけど最初にモノクロを撮影した時、印画紙の上に置かれたのゆは、いちばんに泣き出した。悲鳴のような声だった。ものすごく感情を揺さぶるような。この子の声は全てことばを超えたことばなんだ、とおもった。

 

暗室で現像のようすをかりんとみた。あんな大きな印画紙(赤ちゃんが5人乗れるくらい)どうやるのかなとおもったら、丸めたまま、薬液につけて、くるくる巻いて動かしていくのだった。久々に嗅いだツンとするような薬液の匂いはなまぐさいような、うれしいような匂いだった。

 

最後に印画紙を広げて行くと、暗闇に光の跡として人影が浮かび上がってくる。赤ちゃんたちの、座ってるおしりや、腹這いの胴や、ついている手。仰向けでものすのごくはっきり、隅々まで、手の指の先までぴーんとしているのがわかるくらいくっきりと浮かび上がった影が、のゆだった。かりんと、のゆこれだよね、と話してると、北野さんが、この独特の髪型は…といった。のゆはなぜか頭頂の毛ばかり伸びてしまって、会う人会う人に、髪が長いねと言われるのだけど、下の方は伸びてないので、わたしは仕方なく、なんかここだけ伸びちゃって…と答えている。のゆはその毛の先から、泣く時開いたまんま、ちょっと指先を曲げてぴーんとする手の形のまで、印画紙の上にあらわれていた。それはまさしく、のゆだった。

 

そのあとカラーを二回撮影して、もう一回というところでうちはあおのお迎えがあるので先に帰ることにした。暗闇が怖いと言って外に出ていた4歳の女の子と、かりんは芝生を駆け回って遊んでいた。帰るよーと声をかけると残念そうにその女の子は手を振った。

 

他愛ない写真の話などしながら北野さんの車で駅まで送ってもらう。今日は久々楽しかった、とおもったので、そうおもったことにもびっくりした。いつも楽しくやってるつもりだけど、写真の空間にいた半日はやっぱりとても、楽しかった。