麻酔が覚めたということで病室に戻されたのゆは、それでもそのまましばらく眠り、次に目を覚ますともう、水を飲める時間になっていた(麻酔の前後は、しばらく水分をとれない)。看護師さんがほにゅうびんで水のようなものをもってきて飲ませようとしたけど、ほにゅうびんを飲みつけないのでいやがった。看護師さんは、「おおきすぎるのかなあ」といって、もっとちいさな飲み口をつけたほにゅうびんと、シリンジとをもってきた。ほにゅうびんには、ミルクのみ人形のほにゅうびんのように、小さなオレンジ色のゴムの飲み口がついていた。シリンジという響きからガラスのなにかを想像していけど、それはプラスチックの注射器だった。
そのシリンジの先から落ちる水滴が、かろうじてのゆのくちに落ちる。のみ込んだのは、ほんのひとくちだったろう。小さなくちに水滴が落ちるのが、そのとき何よりも、気高く見えた。